砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

自分含めこれから政治を語りたい人へのブックガイド

はてな界隈でも青木大和の話が盛り上がっておりますな。ここからは当事者周辺の細かい話が出てくるぐらいで、一般ピーポーにはろくな分析ができないだろうと思われるので、私も何も言うまい。

 

ところで、彼は身を削ってまで政治に対する国民の意識向上を図ろうとしたわけだが、当のわれわれは政治について何が語れるだろうか。青木氏はなんとなくみんな政治に関心を持つべきだと思ったまま熱くなってしまったんだろうけど、曖昧な感情論を排して冷静に政治について語ることができるだろうか。

 

それに関して何らかの示唆を与えてくれそうなのが久米『原因を推論する』だ。



この本は政治学の本だ。でも世間一般の政治のイメージと違うのは、統計学を用いて政治を数量的に分析してしまうところにある。政治の話をしてしまうとすぐに保守だリベラルだとレッテル貼りが始まってしまうが、本書ではその前に政治の因果関係について冷静に分析し、適切な分析手法を選んでいく。その手法に統計学のような量的分析がたびたび登場する。だが質的分析にも目配せを忘れておらず、統計一辺倒ではないところがうまくバランスが取れている。

 

政治学の本とはいえメインテーマは題名の通り原因の推論であって、真面目な教科書ではない読み物ゆえにすべての政治上の問題に対して答えを出しているわけじゃない。はやりの統計学本でも見るようなネタがあったり、経済学のネタがそのまま出てきたり(大竹「競争と公平感」文雄の文献が複数引用されていた)する。それでもやっぱりこの本がえらいのは、一般人向けに政治学の分析手法をわかりやすく説明しているところだ。小学4年生が疑問に思うよりも早く、大人たちに政治に対してバイアスを極力排したアプローチを可能にする、そんな第一歩を示してくれる。青木氏も、せっかく大学にいるのだから真面目に勉強して、手段が目的化して熱くなってしまう前に落ち着いて考えられるようになってほしかった。擁護はしないけれど、やる気がある時点で可能性はあったんだから。

 

我々が小学4年生の子供を持つとき、彼/彼女は政治について知りたがるかもしれない。自分を顧みると聞きはしなかったもののやはりよくわからないものだと感じていたっけ。実際にどんなことを語るにせよ、そのときまでに判断材料はそろえておきたいな。

 

つぎは同じ著者のこれあたりかしら。