砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

だがナスはうまい

諸君、この喜びと共に今年の夏を迎えられることはこの上ない喜びである。ナスがうまい。とにかくうまい。とにかくうまいのである。

例えば、豚バラ肉と炒めるとしよう。フライパンの脂を一瞬で吸い尽くす様には正直ドン引きであるが、油を吸ったナスほどうまいものはない。さらにピーマン、これは多少マニアックだが、こどもピーマンと呼ばれる細長くて身が分厚く、味の濃いピーマンがある。これと一緒に炒めるのもうまい。油を吸ったナス、青臭いピーマン、ただでさえうまい肉。夏だ、米を食おう、ビールを飲もう。我々は自由なのである。

こう書いてはいるが、ぼくには腸の持病があるので脂の多いものは食べられない。食べるともれなく下痢するからだ。「もれなく下痢する」って、なんかこう、ねえ、ウフフ。だがナスはうまい。その事実に変わりは無い。先日ナスをレンチンして食べたのだが、ただこれでさえうまい。調理に油を使ってないから腹を壊すことはない。でも、ナスってそういえば何味なんだろうか。

そう思って調べてみると味についてのはっきりした言及は特になかった。生だと灰汁があるとか、酸味や苦みがあるとか、これだけの情報ではとてもおいしいとは思えない。だがナスはうまい。そして味についての明確な描写はないのに油との相性については必ず言及されている。みんな何だと思ってるんだろう。だがナスはうまい。

先日初めて婚活パーティーに参加した。なんか色々思うことはあったのだが、人と人が出会って仲良くなることは難しい。それを商売にすることも難しい。みんなよく生きていられるな、と思った。あと、女性の参加費がものすごく安いパーティーだったのだが、女性のやる気が無くて、みんな暇つぶしに来ているようだった。なんだかこう、女性の貧困みたいなことを考えてしまって、でもそれを口にすると風俗嬢に説教する男みたいでなんだか嫌で、でもなんなんだろう。だがナスはうまい。おいしいものを食べて生きていたい。当然エビフライもおいしいが、ナスのうまさも最高である。今ここでエビフライを持ち出したことに全く意味は無い。

さっきはナスとピーマンを合わせるレシピを紹介したが、他にもおいしいナス料理がある。しらすをごま油で炒め、ナスと万願寺唐辛子をあわせて軽く炒めたらめんつゆなんかで煮るのだ。ごま油は使っているが量は調節すればいいのだ。ピーマンも万願寺唐辛子もいっしょではないか、いや違うのである。なんか今日食べた奴めっちゃ辛かったし。それはそうとこの煮物、名前はなんというのだろう。知らないがうまい。熱くてもうまいし、この季節冷まして食べてもうまい。

この料理をおれに教えてくれた男は、かつて僕が親友だと思っていた男は、この僕から最愛の女性を奪った男でもある。なんかうっかり人にこのことを話したらマンガみたいな話と言われた。そうかな、ありふれてるんじゃないのと思わないではなかったが、たしかにまあ、おれもドラマみたいだなと思ったよ。自分が彼の立場だったらどうしていたかと聞かれたが、死ぬほど悩んだ末に身を引いてただろうなと答えた。嘘偽り無く答えたつもりではあったが、そいつを今でも殺してやりたいと思っていることとは大いに矛盾しているのに気がついた。しかしこの人初対面なのに踏み込んだこと聞いてくるなと思ったが、彼女もまた婚活イベントで出会った人なのである。まあいいかと思いながら、お互い最初から下心があって出会った相手というのは面白い関係性だと思った。どう転がっていこうか。

だがやはりナスはうまい。この季節、スーパーの漬け物売り場にはちょっといいナスの漬け物が並ぶのだ。あれだけ油との相性がいいと言われたナスのくせに、まったく油を使わない漬け物にしてもうまい。なんでだろうな、はっきりした味もないのに。

久々に「秒速5センチメートル」を見た。久々に泣きたかったので。かつては貴樹君に感情移入して泣けてしまったのだが、大人になってから貴樹にふられる女性が悲しくって泣けて仕方なかった(漫画版では描写がめっちゃ増えてマジで泣ける)。それでも結局ラストの山崎まさよしが流れ始めると涙が止まらなくなってしまったのだが、一瞬号泣しても泣き続けることができないのだ。役者に向いているのかも知れない。

だがナスはうまい。この、なすそうめんという料理がものすごくうまい。この記事へのリンクを張れることが、この記事唯一の有益な部分である。

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