砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

そしてコウモリは黙して語ることがなかったのであった~深夜の国道、筋少を聴きながら

いつだったか、認知行動療法の資料だったか、幼い頃に好きだったものに触れることが回復につながることがある、という旨のことが書かれていた、ような気がする。根拠はない。昔好きだったものは思い出になるけれどいつまでも好きなのだから、自ら触れたいと願うまではそれらに触れることはなんだか後ろ向きなことだと思っていた。なんでそんなに意固地になっていたのかわからないが、10代の時に好きだった筋肉少女帯を今になってはあまり聴かなくなっていた。それをなんだか急に、聴きたくなったのである。だから愛車に乗って1時間ほど国道を飛ばしてきた。おいなんだか青春っぽくねえかおい。以下はその感想である。

筋肉少女帯との出会いは中学校の時、担任の先生がかつて聴いていたと話していたのである。そのときは「ああ、大槻ケンヂって変わった名前の人いたよね」ぐらいの認識だった。高校に入って以来、中学の時は小田和正が好きだったイシムラ君がロックやパンクやテクノを聴くようになった。彼と話すうち、キングクリムゾンはいいよね、戸川純はヤバいよね、平沢進、ああそうだ筋肉少女帯も最高だよね、という流れになり、聴きはじめたのである。不条理を歌った歌詞、バカテクのサウンド、急に挿入される語りや寸劇、そしてなにより不条理の先になんとしても希望を見いだそうとするロマンチックさがどうしようもなく好きだったのである。おい、高校生のおれよ、なんであんなに筋少が好きだったのか、当時はよくわからなかったけどそのうち言葉にできるようになるからな、よかったな。

各種アルバムを聴こうと思うとどれにしようか悩む。それと、一部アルバムはかつて俺から最愛の女性を奪った某クソ野郎に貸したまま借りパクされているのである。つくづく地獄に落ちろ。こういうときにベストアルバムは助かる。アルバムはそれ単独で作品なのだとする意見はよくわかるが、ベストアルバムにもひとつの作品として聴けるように配慮されているものだってあるのだ。いや、これがどうかは知らないんだけど。 

車はオレンジ色のアクア、先日ぼくをふった女性にバカにされたアクアである。C-HR乗りに言われたくない、地獄に落ちろ。車で聴く音楽は好きだ。イヤホンやヘッドホンほど没入感はないし、オーディオオタクが持ってるようなちゃんとしたスピーカーのある部屋とは比べものにならないんだろうけど、最大100キロで走る車で聴くっていうのは他にはない魅力がある。うっかりすると事故ってそのまま死ぬというリスクが唯一にして最大のネックではあるが。ファンク、プログレありのハードロックである筋肉少女帯はすごく夜のドライブにはまる。ノリノリで不条理を歌われると、ああ確かに人生って辛いよな、高校生のころって、そんなにつらかったっけ、まあつらかったんだろうな、当時のおれも周囲の大人が楽しいのは今だけっていう呪いのような言葉に引っかかって素直につらいとは思えなかったけど、つらかったよな、いまはとりあえず生きる方に舵を切ってるけど10代にとっては生きるか死ぬかって結構切実な問題だったよな、それをジョーク込みでもちゃんと言葉にしてくれたオーケンっていいやつだな、ありがとうオーケン、とりあえず死なないですんだよ、死んでた方が良かったかも知れないけど、まあとりあえずはこっちでいいかな。以前には四人囃子の一触即発を聴きながら夜にドライブをしたこともあるが、あれもなかなかよかった。