砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

みなさん大変ですね

職場の40代パートさんが「鬼滅の刃」のアニメにはまったらしい。みんなでせっせと作業をしているときに聞いたのだが、大学生の娘に「みんな見てる(みんなは誰のことか知らない)」と言われて見てみたらすっかり夢中になったらしい。アニメの続編が映画であることをひどく嘆いていた。

ぼくが鬼滅の刃について知っていることと言えば

・鬼か妖怪と戦うらしい

・妹が鬼になってしまいそうだったがなんとか踏みとどまっている

・なんかすごいおっぱいと、イノシシの頭したやつがいる

これぐらいである。今もあえて調べずに書いている。せっかくだから話を聞いてみたのだが、イノシシのやつは男なのに顔がキレイだと言われるのが嫌でイノシシで隠しているそうだ。そこでぼくが発したのが「ああそうなんですか、みなさん大変ですね」という言葉である。あと「『キテレツ大百科』のゴリライモってカオルって名前が女みたいで嫌だからゴリライモって呼ばせてる、みたいな感じですね」とも言った。10分後に気づいて訂正したがゴリライモはど根性ガエルであってキテレツ大百科ブタゴリラである。

あとなんか咥えている女の子がいるな、あの子はきっと忍者で、巻物をくわえてるのかな、って思ってたのだが、あれは巻物じゃなくて竹で、鬼になりかけの妹が人をかまないようにくわえているらしい。ひとしきり驚いた後で「みなさん大変ですね」と言った。ちなみに相手は女性で恥ずかしかったのでおっぱいの話はしなかった。

この、「みなさん大変ですね」って表現がなぜか気に入ってしまった。相手から得た情報を否定せず、とはいえ大いに共感するでもなく、相手の話への相槌としてすごくいい距離感の言葉ではないか。「みなさん大変ですね」って言われてあんまり否定すべきシチュエーションもあまりないだろう。それでいて多分に他人事である。ここまで便利な割に実は突き放している言葉も珍しい。それでも相槌としてその場で流れていくのですごく使いやすいのである。

なんだかこうやって薄い言葉を使っていくと人に嫌われてしまいそうなので、近くネットフリックスで鬼滅の刃を見て件のパートさんに話しかけたいと思う。