砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

新海誠がおれを刺しに来た 映画評「君の名は。」

あの、最近でも「お前は女性との距離の詰め方がキモい」なんて言われるぐらいにはぼくはキモいらしいのでいかにこの映画が気持ち悪かろうと、某シロクマが「秒速……」をキモいと言おうと、そしてこのエントリがいかにキモかろうと、その点については十分に自覚したうえで書いてるんだよって言い訳したうえで本題に入るのですが、えっと、その、劇中で奥寺先輩と瀧くん(三葉ちゃんver.)がデートしてた国立新美術館、あそこでぼくもデートしようとしたことがありまして、ひとりでも何回か行ったことがあったのにわざわざ下見するぐらいの気合の入れ方をしたのに結局実現せずに終わったんですが、それが実現しているのを大スクリーンで見た瞬間にもう泣いてるよね、っていうか周りカップルだらけだったけど彼氏を待ってる時の彼女たちとかかわいすぎてもう映画が始まる前から泣いてたよねっていうか、閑話休題ともかくですね、ほかにも奥寺先輩とデートの待ち合わせしたり就活の合間に再会したりした四ツ谷駅前とかも、仲良かった先輩との思い出の場所だったり就活で憔悴しきってふらついてた場所だったりするんですよ、これがねえ、そんでもって瀧くんと三葉ちゃんが電話かけてもつながらなかった歩道橋あるじゃないですか、あれをなんだかすごいテンションで走り抜けたこともありましてですね、で、舞台が東京と飛騨じゃないですか、ぶっちゃけ今住んでるのが岐阜だったりするのでだいぶ見たことあるものが見えるんですよ、「あ、あれは美濃太田行きワイドビューひだじゃないか!」とかね、もう新海誠にストーカーされてんじゃねえかってぐらいおれにゆかりの土地が映るわけ、もうね、なんなんだと、アボカドバナナかと、そしてもって極めつけは、ねえ、これを読んでいるあなたに語りかけてるんですけど、あなた、夜の新宿を人を探してさ迷い歩いた経験とかってあります?ありますあります?おれにはあっちゃうんだよなあこれがなあ!そんなこともあったよなあとか考えてるうちに泣いてるよね、もう泣いてるよね、ていうか「秒速5センチメートル」が大好きなんですよおれは、何回も見て小説版も読んで山崎まさよしのCD買って明け方の桜木町に行っちゃうぐらい(でもあそこ、そういうロマンチックな感じでもなく海とその近くを走る幹線道路がとにかくかっこいい硬派な町でした)大好きなんすよ、でね、あれもラスト新宿じゃないですか、もう嫌な予感しかしなかったわけ、次の場所を選べないいつでも探しているよどっかに君の姿をまでおれの脳内まさよしはフガフガ歌ってたわけ、でね、そこからのラスト、なんか三葉ちゃんきれいになっちゃってすれ違ったまま通り過ぎようとするじゃないですか、もうこれはあれだ、瀧くんが貴樹くんみたいにドヤ顔して終わる感じだなあーあって思うじゃないですか、でもラストああきたかって話なんすよ、ほら「バタフライエフェクト」って映画あったじゃないですかあれの未公開のラストシーンが何パターンかあるんですけど、監督のコメンタリーでは「撮ってはみたけどこれはよくない」みたいなやつがあるんですけど、それを「君の名は。」ではなぞっちゃってるんですけど、でもいいの!これはこれでいいの!そもそも別の映画だし、この映画は「ほしのこえ」で「ひとりで作り上げた執念がすごい」みたいなことをクールに言いつつ、でもそのエモさになんか引っかかるものを覚えつつ、「雲の向こう、約束の場所」では吉岡秀隆をもってきたあざとさにケッと思いつつ、「秒速5センチメートル」で爆発して人生の大切なものを持っていかれたみたいなはたから見ると単なるナルシシズムに過ぎないサムシングを何やら大事そうに抱えつつ、「星を追う子供」で「あれ?」ってなりつつ、「言の葉の庭」ではおおうなんかポエジーな妄想強すぎないかでもユキちゃんチョコと金麦っておれもやってみたけど意外と合うよねファァァーってなりつつ、今回の「君の名は。」を迎えた人たちの抱えきれないもやもやが一気に解放されるためにあったというか、貴樹くんがやっと成仏したよやったね彼も草葉の陰で喜んでるよ、そういう爆発を一般受けする面白い映画なんだから君も見なよ的な空気の中で落ち着いて迎えることができたという喜びというか、そしてそこにおれの場合は前述の通りの自分のエピソードが重なりまして、ああこれはもうおれのための映画だ、おれのことを描いた映画なんだってヴィジュアル系バンドを追っかけまわすバンギャみたいな心理(さもなくば大槻ケンヂの描くそういうの)みたいになってるよね、ていうかみんなきっと似たようなこと思ってて、自分がいちばん新海誠のことを理解しているなんて思ってるんじゃないの、神林長平のファンみたいにさあなあんて思ってたりするわけなんですが、自分が一番それに近くて我ながらキモいなあワハハなどと思ったりするのですが、っていうか何の話だったっけああ「君の名は。」なんですけど、もうおれ以外にこの作品の良さを分からなくていいので誰も見なくていいです、以上!