砂漠のナボナ

来る前からここにいて、去った後もここにとどまる

男の子の街、銀座

銀座と言いつつ初っぱなから新橋で恐縮だが(おれなら徒歩圏内)、新橋駅からしばらく歩いたところにタミヤプラモデルファクトリーという店がある。その名の通りタミヤの直営店で、店の中には所狭しとプラモデル、ラジコン、ミニ四駆が並んでいて、しかもミニ四駆のサーキットと作業場まであるから買ったミニ四駆をすぐその場で走らせることができるという、それはそれは楽しい店だ。ぼくは今岐阜に住んでいるけれど、東京に行くたびに立ち寄ってしまう。そして時間を忘れてプラモデルを眺め、フォークリフトのラジコン組み立てキットとか買ってしまうのだ。新橋という立地上夜になるとたくさんのサラリーマンが来店するのだが、誰も彼もみな楽しそうだ。君の家のお父さんがうっかりタミヤのプラモデルを買ってきたならば、それはきっとこの店の力にやられたに違いない。

 

もうひとつ、銀座に天賞堂という宝石店があるのだが、ここは1階が宝石店で2階が鉄道模型の店になっている。一瞬その組み合わせは何だと首をひねってしまうが、きっと鉄道模型の真鍮加工の技術なんかが宝石加工の技術と近いものがあるのだろう。知らんけど。あいにく鉄道模型になると本気で宝石並の値段がするものもあったりして買い物はできないのだが、前を通るたびにこっちも立ち寄ってしまう。銀座というおしゃれでハイソな街に模型店があるというギャップもいい。ここもおじさんばっかりだ。定年退職し左ウチワな生活を始めた暁には、是非とも日参して同好の士と語り合いたい、そんな店である。

 

どちらも、幼い頃にあこがれた夢の空間そのままである。訪れた男性はその場で5歳にまで若返り、同行する女性には呆れられるだろう。でもいいのだ。こころゆくまで堪能しよう。BGMは筋肉少女帯「おもちゃやめぐり」だ。米トイザらスが経営破綻し、既存店もすべて閉店した後に公式サイトにアップされたメッセージは「最後の約束、ずっと子供でいよう!」だった。言われるまでもない。ぼくらはいつでも子供に戻れる。そしてその場所は銀座にある。この巡り合わせが、なんだか不思議だなと思うのだ。

 

あれは東京から引っ越す少し前、ちょうど東急プラザがオープン直前だったのだが、夜にふと前を通りかかるとオープン前のはずなのにガラス張りの窓に街を見下ろす男性の人影が見えたのだ。何をしていたのかは知らないが、高層ビルから銀座を見下ろすというのはいかにも成功者という感じがする。きっと手にはシャンパンかブランデーグラスを持っていて、後ろには肩を露わにした真っ赤なドレスをきた美女がいたことだろう。そういうわかりやすい成功者も含めて、実に男の子の夢が詰まったいい街だと思う。いや、本当はどうだかわかんないんだけど